こんにちは、現役介護士のさかもと ままる@mamaru0911です。
認知症患者が、家を出てから道に迷いひたすら歩き回る事を「徘徊」と呼んで来ました。
しかし認知症の患者側からみると「家をでる」という目的があって外出したものの、帰り道が分からなくなって「迷っている」という状態なわけで、根本的に「徘徊」という呼び方はおかしい、という自治体の動きがあるそうです。
「徘徊」使うの、もうやめる。認知症の人の声を尊重、自治体で見直しの動き
「徘徊」ではなく「道に迷っている」
そう言い換えて行こうということですね。
「認知症」という言葉自体、以前は「痴呆症」「ボケ老人」などと一般的に呼ばれて来ました。
2004年に厚生労働省が言い換えを行い、今では「認知症」という言葉が一般化しました。
たびたび起こりえる、介護における言葉の「言い換え」。
そこにはどんな意味があるのでしょうか?
今日はそんなお話です。
介護の言葉を「言い換える」
「痴呆症」を「認知症」
「徘徊」を「道に迷っている」
その言葉の言い換えの真意は、その言葉の意味が認知症患者当人にとって「侮蔑的」だからということでしょう。
確かにそうかもしれません。
しかし僕自身、介護現場で介護士として働いていて実際の介護の現場をみていると、こういった世間の風潮自体が、日本の「介護」をますます苦しめているような気がするんです。
例えば「徘徊」を「道に迷っている」と言い換えても、現実認知症の人の症状や状態はなんら変わりません。
「言い方」を変えても、本質的なものは何も変わらないということです。
むしろ「徘徊」から「道に迷っている」に言い換える事で、「認知症」の人と「普通の人」の垣根が低くなっていくわけです。
そうなると、認知症患者本人やその家族は自尊心を傷つけなくて済むかも知れません。
しかし世間の「認知症」「介護」を知らない人達にとっては、「介護」そのものが今よりもますます自分から遠い存在になってしまうのではないでしょうか?
つまり「認知症」「介護」という現実を、日本は無理矢理綺麗な蓋をかぶせて、隠そうとしているようにしか僕には見えません。
世間は介護の現実を知る必要がある
介護業界の一番の問題は、圧倒的な「人手不足」です。
2025年には全国で38万人の介護士が不足する。
と言われています。
さらに、
2025年には全国で認知症患者の数が700万人を突破する。
という予測も出ています。
日本の介護業界は、本当に壊滅的な状態なんです。
しかし一向に介護する側の人口は増えず、月日だけがジワジワと過ぎ去っていきます。
介護業界の人手不足の原因は
- 収入の低さ
- 介護職のイメージの悪さ
に加えて、世間の「介護」全体への認知度の低さが挙げられると僕は思っています。
日本の介護業界が、いかに危機的状況であるか、世間の人はほとんど知りません。
その理由こそが、介護の「言葉の言い換え」を含む世間の風潮なのです。
日本は「介護」の現実を隠しすぎる
これは僕自身の直感というか、肌で感じている感覚なので必ずしも正解かどうかは分からないことです。
しかし僕が思うに、日本と言う国全体が「介護」というジャンルに関してその現実をひた隠しにしているように見えるんです。
僕が好きなテレビ番組で、NHKの「72時間」というドキュメンタリー番組があります。
その番組のなかで、とある老人ホームの特集がありました。
NHKがつくる「介護」関連の番組ですから、僕は楽しみにして見たんですが…
内容は本当にひどいものでした。
この回の番組に出て来る人のほとんどは、自立して豊かな老後を送っている老人達ばかりでした。
「年をとっても生き生きとした老後を」
「高齢者でも充実した楽しい毎日を」
みたいな感じに番組はまとめられていました。
しかし現実はそれだけじゃ無いと思うんです。
取材したような大型老人ホームに、自立した高齢者だけが入居しているはずがないんです。
むしろ認知症や介助、介護を必要とした人達のほうが多いはずです。
しかし報道では、その「多数派」である人達には、ほとんど触れられていません。
そういった方々自身やご家族が「見られたく無い」「テレビなんて出たく無い」ということで取材が難しいという側面もあると思います。
でも僕は「国営」であるNHKが、なんと偏った番組を発信しているんだ、と唖然とした思いで見ていました。
自分の身内や近しい所に「介護」「介助」を必要とした人がいない人は、自分や自分の両親の「老後」を実はリアルにイメージすることは出来ません。
そういった人がこの「72時間」の番組をみたら、
「ああ、老後って悠々自適に老人ホームで幸せに暮らせるもんなんだな」
としか思わないでしょう。
同時に介護業界の危機的状況や、日本のこれからの介護業界を考えることもしないと思うんです。
日本は「介護」の現実を隠しすぎる。
「徘徊」を「道に迷っている」に言い換えることも、僕にはこの延長に見えてしまうんです。
表面ではなく本質的な改善を
言葉を言い換える事に、まったく意味が無いとは言いません。
しかしそれだけでは、本質的な変化はまったく起こらないのも事実だと思います。
では具体的に、日本の介護における本質的な改善とはどのような行動なのでしょうか?
介護職の入門資格である「介護職員初任者研修」
この資格は、通うスクールによって金額が違いますが取得するのに数万円から十万円を超えるところもあります。
僕自身は10万円近く自腹で払って取得しました。
一部ハローワークなどで補助金を出す様な制度もありますが、この資格を各自治体が「無料」で取らせてはどうでしょう?
初任者研修の資格取得には、期間は短いですが実際の介護現場での研修もあり、「リアルな介護」を肌で感じる事ができます。
介護職で働かないひとでも、親の介護にも役に立ちますし、何より「自分自身の老後」をイメージすることが出来るとても良い資格制度だと思います。
介護職に就かない人でも、一度受講して損はない資格だと思います。
極論ですが、街の全ての人が「介護職員初任者研修」の資格を持っていれば「道に迷った」認知症の人がいても、安全に暮らせる街が出来るのでは無いでしょうか?
まとめ
いかがでしたでしょうか?
認知症患者の方やその家族の人権を保護するのは、非常に重要な事だと思います。
しかしそれが日本の「介護」の現実に、蓋をしてしまっては本末転倒な気がします。
もっと日本は、国や行政、マスコミが「介護」の現実を国民に伝えるべきです。
このままいけば、破綻しかけている日本の介護は、この先本当に大変なことになるはずです。
その現実をいつまでもひた隠しにしても、いつか苦しむのは自分たちです。
僕は派遣介護士として、日々リアルな介護現場を目にしています。
そこでは問題点や改善点が山積みにされているんです。
そういった現状を、ひとりでも多くの人達に知ってもらいたい。
さらにその中で「自分も介護の現場で力を貸したい」という人がいたら、是非介護業界に転職してもらいたいと思います。
この「かいご畑」というサイトから登録すると、介護職員初任者研修の資格を無料で取得できる制度が利用出来ます。
「無資格、未経験だけど介護業界で働きたい」
という人にはうってつけのサイトです。
日本の介護は、今すぐにでも変えなければいけない事がたくさんあります。
僕と共通した思いがある人は、是非介護業界に来て欲しいと切に願っています。