こんにちは、現役介護士のさかもと ままる@mamaru0911です。
僕は43歳「無資格・未経験」で異業種から、介護福祉・医療の業界に転職して来ました。
現在はきらケアで「派遣夜勤専従介護士」として都内の有料老人ホームで働いています。
以前こんな記事を書きました。
認知症をわずらう高齢者、特に立位や歩行が不安定な施設利用者に対して、介護職が
「立たないで!」
という言葉を発するのは、リアルな介護現場では残念ながら良くある話です。
しかしこの発言は「スピーチロック」にあたり、立派な「身体拘束」に位置づけられています。
今日は、特に介護施設等に入居している利用者に対する「身体拘束」を含めた
高齢者への虐待
についてお話します。
高齢者虐待に関しては「建前」上の話は良く聞きますが、実際の介護施設での現状はあまり情報が無い様な気がします。
10ヶ所以上の有料老人ホーム、特別擁護老人ホームなど様々な介護現場で勤務経験がある僕が
実際の介護施設での「高齢者虐待の現実」についてリアルにお話します。
高齢者への虐待問題
高齢者介護を行う上で、切っても切れない重要な問題です。
介護を伴う基本資格「介護職員初任者研修」や「介護職員実務者研修」などの受講時には、必ず触れる項目です。
しかしながらあくまでも「理想」とする「高齢者虐待の禁止」と実際の介護現場での現状には大きな乖離があると僕自身は感じています。
介護現場で働く職員のほとんどは
「高齢者虐待はいけないこと」
という認識はあります。
しかしながら
「気がつかないうちに無意識に行っている虐待」
が実際の介護現場では山のようにあるのです。
高齢者への虐待の具体例
この項の内容は、実際の介護現場で働く職員であれば「誰でも知っている」むしろ「知らなくてはいけない」内容です。
改めて書く必要も無いと思いますが、これから介護職を始めようと思っている方に向けて書いておきます。
【高齢者への虐待】
①身体的虐待
- 叩く・つねる・殴る・蹴る・やけどをさせる
- 本人に向かってモノを投げつける
- 介護しやすいように職員の都合でベッドに押さえつける
- 拒否しているのに職員の都合で食べさせる
- 医学的根拠に基づかない苦痛を伴うリハビリを強要する
- 移乗などの際に必要以上に身体を高く持ち上げる
②放棄放任(擁護すべき職務上の義務を著しく怠る行為)
- 水分や栄養補給を怠る
- 暑すぎる・寒すぎる等の環境に長時間置く
- ナースコールなどを手の届かない所に置く
- 正当な理由無く更衣させずに就寝させる
- 正当な理由無く外出させない
- 衣類が濡れているのにそのままにする
- 必要なメガネ・義歯を使わせない
- 他の利用者に暴力を振るう高齢者への対応を放置する
- 同僚の虐待行為を放置する
③心理的虐待
- 怒鳴る・罵る・悪口を言う・嘲笑う・無視する・からかう
- 「追い出す」などと脅す
- 理由無く利用者を撮影し、他者に見せる
- 利用者の持ち物を乱暴に扱う、捨てる
- 外部との接触を遮断する
- 本人の意志に反して異性介助を繰り返す
- 子供扱いするような呼称で呼ぶ
- 自分で食事が出来るのに全介助する
- ナースコールを無視する
④性的虐待
- 人前でオムツを替える
- 下半身を裸や下着のまま放置する
- 無理矢理性的な話を聞かせる、させる
- 本人の裸などの撮影をする
- 性的行為を強要する
⑤経済的虐待
- 寄付や贈与を強要する
- 生活に必要なお金を不当に制限する
- 正当な理由無く売店等で買い物をさせない
- 理美容院の利用をさせない
- 立場を利用してお金を借りる
- お金を盗む、無断で使う
- おつりを渡さない
上記はあくまでも「一般的に」高齢者虐待といわれている項目です。
実際の介護現場では、これに当てはまらない「虐待」も行われているのが事実です。
実際の介護施設で行われている「虐待」
僕が今まで働いて来た介護施設で、実際に行われていた「高齢者虐待」で最も多かったのが、上記の項目で言う③の「心理的虐待」です。
足腰が弱っていて「転倒リスク」が高く、さらに認知症などで説明しても指示が入りにくい利用者に対して、車イスもしくは食席から立ち上がる行為を咎める
「立たないで!」
という職員の言葉は、介護現場で働いた経験がある人であれば、誰でも見かけた事があると思います。
これは「スピーチロック」にあたり、立派な「高齢者虐待」行為です。
「万年人手不足」の介護現場では、このような介護職員による「無意識の虐待」が残念ながら横行しています。
上記の項目にあるような
①身体的虐待
④性的虐待
をまともに目にする機会は少ないと思いますが、細かく言えばその他の項目の虐待はどこの介護施設でも日常的に起こる可能性があるものだと僕は思います。
なぜ介護施設で虐待が繰り返されるのか?
ではいったい何故、「虐待行為」を悪い事だと認識している介護職員が、日常的に高齢者を虐待してしまうのでしょうか?
その最大の原因は、現在の介護職のほぼ全てが
介護職員の裁量任せ
として行われているからです。
介護施設での介護業務は、利用者の居室で行われれば「密室」での業務になります。
その為、他の職員や家族、第三者の目が全く無い場所での仕事になるのが、介護業務なのです。
介護施設でのケア業務は、介護する職員本人の裁量にそのほぼ全てが委ねられています。
それが故に「誰も見ていない状況」で、その職員が利用者にどんな暴言を吐いているか、どんな虐待をしているかは、知る由がありません。
職員個人の仕事に関して、全く他者のチェックが入らない仕事というのは、実は世間的に見てもかなり特殊な環境です。
人間とは、自分が思っているほど強いものではありません。
介護職員とは言え、一人の人間です。
強いストレスに見舞われ、そのはけ口として無力な利用者へ「虐待」という形で発散してしまう。
そんな現実が、悲しい事ですが介護業界では日々起こっているのです。
施設での高齢者虐待のリアル
世間では、介護施設での「高齢者虐待」が度々ニュースとして取り上げられます。
中には「殺人」にいたるケースも少なくありません。
そのような重大な「高齢者虐待事件」のほとんどは、実は「夜勤帯」に行われています。
僕自信「派遣夜勤専従介護士」として数年間働いているので、特に介護施設での夜勤帯の仕事内容に関しては、とても考えさせられるものがあります。
なぜ深刻な高齢者虐待が「夜勤帯」に多発するかと言えば、やはり「第三者の目」が全く無い、というのが最大の原因だと思います。
特にワンフロア一人夜勤体制の介護施設の場合、ほぼ一晩中「誰も見ていない」状態が続きます。
その環境の中で、自分の責務に忠実でない介護職員がいた場合、事件や事故が起こってしまうのです。
介護施設での高齢者虐待を無くす方法
今後日本では、さらなる「超高齢化社会」が待っています。
そうなれば、必然的に今よりもさらに多くの「高齢者虐待」のニュースが増える事になります。
特に介護施設での虐待を今後防ぐ具体的な方法は
- 介護職員の人員を増やす
- 介護職員の質を教育などによって向上させる
- 施設内でのオペレーションを具体的に改善させる
以外に方法はありません。
しかしその全てを一気に、しかも確実に行っていくことは至難の業です。
社会が、介護業界全体が変わらなければ、いまの環境、現実は何も変わりません。
何も変わらなければ「高齢者虐待」は無くなる事はありません。
大切なのは
あなたが、あなたの両親が介護施設に入居して「虐待」の目に遭っても許せるのか?
を全ての人が真剣に考えられるかどうかなのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「高齢者虐待」は、一部のニュースになるような「特別な事」では決してありません。
ほとんどの介護施設では日常的に行われているのです。
その現実をいかに真摯に捉え、改善の意思を社会が介護業界が、そして我々介護職員本人達が持たない限り、この現実は変わりません。
この記事を読んでいる現役の介護職員の方々は、今一度「虐待」に対して深く考えて頂けるきっかけになると幸いです。