こんにちは、現役介護士のさかもと ままる@mamaru0911です。
僕は43歳「無資格・未経験」で異業種から、介護福祉・医療の業界に転職して来ました。
現在は介護業界で今最も勢いのある介護派遣会社であり、トップクラスの高単価案件を豊富に持つ、コンプライアンスもしっかりとした優良派遣会社きらケアで「夜勤専従介護士」として、またカイゴジョブで紹介してもらった「日勤パート介護士」としてWワークをしています。
現在は介護職だけで、月収40万円以上稼いでいます。
※僕が未経験で登録した介護派遣会社はベネッセMCMでしたが、現在ではきらケアに介護派遣会社を変更しています。僕が介護派遣会社を移った理由に関してはこちらの記事を読んでみて下さい。
https://www.kaigoshibaby.com/entry/goodbye-mcm
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先日こんな報道がありました。
女性介護士の左胸刺す 殺人未遂容疑で認知症?の87歳逮捕 – 産経ニュース
高崎市の特別擁護老人ホーム「花みずき寮」で、87歳の入居者が女性介護士の胸をハサミで指し、殺人未遂の現行犯で逮捕されたというニュースです。
この87歳男性入所者は「認知症」の疑いがあるということです。
この報道を見て、ネットではまたさらに「介護」「老人」「介護職」「認知症」などへのイメージが「怖いもの」になりつつあります。
僕は43歳の時に「無資格、未経験」で介護業界に転職しました。
現役介護士として、今回の事件の報道にとても違和感を感じています。
この事件「本当の犯人」はいったい誰なんでしょうか?
今日はこの事件について深堀りします。
87歳認知症患者が殺人未遂で逮捕
報道によると、5/16日午前5:55分ころ、高崎市にある特別擁護老人ホーム「花みずき寮」で女性介護士(23)の左胸を、刃渡り約8センチのハサミで87歳の男性入居者が刺したとのことです。
4月に入居したばかりのこの男性利用者は、「認知症の疑いがあった」ということです。
- 2階リビングでハサミを持ち歩いていた男性利用者に、女性介護士が注意した所「突然刺された」。
- 男性利用者は「重度の認知症」で、これまでも男性職員を鍋で殴ったり、暴言を浴びせる等していた。
- 現場リビングには調理用のハサミが置いてあった。
- 事件当時、施設には夜勤介護士が5人体勢で勤務していた。
- 男性入居者は、食事や歩行は出来るものの24時間体制での介護が必要だった。
報道内容をまとめると、以上のようになりますがすでに矛盾点がいくつかありますし、僕の様な「現役介護士」目線で見ると、おかしなところが沢山目に映ります。
報道の矛盾
各社の報道によると、事件を起こした87歳男性利用者を
- 「認知症の疑いがある」
- 「重度の認知症」
などと、まちまちの表現をしています。
認知症患者に実際に接した事が無い人にとっては、大差ない表現かも知れませんが、我々現役介護士からすると、「疑いがある」状態と「重度の認知症」と診断されている状態とでは、その方への対応はかなり違ったものになるはずです。
さらにこの男性利用者は、4月に入所したばかりにも関わらず、男性職員を「鍋で殴る」ような暴力行為を働いていると報じられています。
入居者さんの性格や生活サイクルを把握するのに、施設側の介護士も一月くらいは掛かります。
その間に「職員を殴る」ような暴力行為を働いていたとしたら、施設側は「危険人物」という認識があったはずです。
にも関わらず起こってしまったこの事件、「本当に悪い」のは一体誰なんでしょうか?
認知症は「悪」なのか?
各社の報道を見ると
「認知症の高齢者は怖い」
という印象しか感じさせないこの事件。
しかし本当に「認知症患者」は悪いのでしょうか?
確かに「ハサミで人を刺す」ことは絶対にしてはいけない事ですし、もちろん犯罪です。
現にこの87歳の認知症患者である男性は、「殺人未遂」として現行犯逮捕されています。
しかしこの男性利用者が「重度の認知症」であった場合、その意識の中には「人を刺した」という認識は無いと思います。
高齢者の認知症の症状は、人によって実に様々です。
認知症の発祥理由も様々ですし、さらに人によっては「認知症×精神病」などバリエーションも豊富です。
介護現場では、当然そのような認識がされています。
入所したてで「暴力行為」を行った男性利用者に関しては、施設側は相当マークしていたはずです。
報道を見る限りですが、確かにこの事件の「犯人」は87歳の男性利用者です。
しかしこの事件の本当の「悪」は、87歳の認知症高齢者では無く、その行動を予測出来なかった「施設側」の落ち度だと思います。
怪我をされた23歳の女性介護士の方にとっては、不運な事故だったと思います。
施設側が、この男性利用者の行動を予測して「リビングにハサミを置かない」という処置を事前に施していれば、その事件は未然に防げたのではないかと僕は思います。
報道するべきは違う側面にある
介護に関する報道は、どうもこういった「ネガティブ」な側面に偏っているような気がしてなりません。
「利用者を窓から突き落とす」
「他の職員の飲み物に睡眠薬をいれた看護師」
など「介護施設」=「負のイメージ」が益々強まる報道ばかりが目立ちます。
どれも実際に起こっている事件ですから、その報道はごく当然の物であるとも言えます。
しかし「最終的な事実」のみを報道して、その過程や理由を一切報じない現在の「介護報道」に関して、僕は違和感しかありません。
今回の「87歳認知症施設利用者がハサミで女性介護士を刺す」という事件も同様です。
「認知症患者が女性介護士をハサミで刺した」
という事実はもちろんあります。
しかしそれだけを報道するのでは無く
- いったいなぜこの様な事件が起きてしまったのか?
- どうしたら未然に防げたのか?
という点を詳しく報道しなくては、これから先の日本の為にならないと思うのは僕だけなんでしょうか?
これから先の日本の未来に起こる事
2025年全国で認知症患者は700万人を突破する。
と言われています。
700万人ですよ?
横浜市全人口の二倍近い人達が「認知症」になるんです。
さらにそれをケアする介護士の数は
2025年全国で38万人の介護士が不足する。
と言われています。
近い将来、我が国日本では「3人に一人」が高齢者の時代を迎えます。
街中に「認知症患者」が溢れ、彼らが運転する車が暴走し、誰かれ構わず暴力を振るう老人が大勢出て来る…
そんな時代がすぐそこまで来ています。
「認知症」の患者に実際に接した事がある人は、成人人口の2割にも満たないというデータもあります。
自分の両親や身内に「認知症患者」が出なければ、僕の様に介護職に就かない限り、なかなか接する事が無いのは当たり前の話しです。
しかし今後、高齢者人口の増加に伴い、駅や街中、近隣などで多くの認知症患者を目にする機会が増えると思います。
極端な話し、次に「ハサミで刺される」のはあなたかも知れません。
そんな時代を目前にして
「老人ホームで高齢者が介護士をハサミで刺したんだって」
「認知症って怖いねー」
「介護士って割に合わない仕事だねー」
なんていう感覚での報道で、はたして良いのでしょうか?
具体的に「認知症」の内容を掘り下げたり、説明する必要が無いでしょうか?
今回の事件の場合、施設側の対策や対応に関しての報道が必要では無いでしょうか?
「起こった事実」だけではなく「起こらない為に何が必要か」という議論やフォーカスは必要では無いでしょうか?
報道が世の中を創り、時代を創ります。
日本の高齢化率は世界一位です。
日本がもうすぐ迎える「超超高齢化社会」に向けて、まずは報道各社の姿勢が変わらなければ、一般の人の意識が変わることはあり得ないと僕は思います。
まとめ
今日の記事は「認知症患者」が女性介護士をハサミで刺した事件に関して、誰が悪い?認知症に罪がある?などといった部分を書きたかった訳ではありません。
介護に関する事件や事故は、これからどんどん多くなっていくと思います。
高齢者の人口が、ますます増えていく訳ですから当然、事件や事故を起こす可能性も多くなる訳で、良く考えれば当たり前の話しです。
その報道を
「また高齢者が問題起こしたよ」
という書き方だけでは、世間に日本の危険な未来へのシグナルを発することは出来ない、という趣旨のことを今日は書きたかったのです。
今回の介護士がハサミで刺された事件に関しては、本来であれば施設側が責任を取るべきだと僕は思います。
介護施設に入所されている利用者さんの中で「自ら入所を希望した」人は残念ながら少数派です。
ほとんどの人が
「在宅介護で限界を感じた」
「独居生活で自立が難しくなった」
そういった理由で介護施設に入所しているのが現実なんです。
僕は特別擁護老人ホームでの勤務経験もあります。
特養ではなおさらそういった傾向は強いです。
例えば今回の事件、逮捕された男性利用者の家族側からしたら、どう思ったのでしょうか?
憶測ですが、「認知症が原因でもある暴力行為」に限界を感じて、家庭での介護に見切りを付け、後は「プロである」介護施設に預けた途端、ある日「殺人未遂」で逮捕される…
仮に自分の親や身内が同じ状態であったなら、あなたは納得できますか?
ハサミで刺され怪我をした女性介護士は、当然被害者です。
しかし「介護職」はこのようなリスクに常にさらされています。
今回は公表されて事件になりましたが、同じ様な事故や事件があっても公表せずに蓋をしている介護施設は、全国に多数存在していると思います。
介護士の仕事は、「無意識化の行動」をする「認知症患者」と接する機会が少なくありません。
そのリスクを背負っているにも関わらず、国の介護報酬を含めた介護士の収入は、一般職の水準を大きく下回っています。
このまま国や社会が「介護問題」を放置し続ければ、介護業界全体が機能しなくなります。
大前提として、今回の事件を含めた「介護問題」は他人事ではないのです。
なぜなら
あなた自身もいつかは必ず高齢者になるからです。
僕は43歳の時に「無資格。未経験」の状態で介護職に転職してきました。
そんな介護士として未熟な僕でも、日本全体の「介護業界」に向ける目への違和感を感じる事が多々あります。
どうか国や社会、そしてこの記事を読んでいるあなた自身の考え方が、介護に真剣に向き合いますように日々願うばかりです。