こんにちは、現役介護士のさかもと ままる@mamaru0911です。
僕は43歳「無資格・未経験」で異業種から、介護福祉・医療の業界に転職して来ました。
現在はきらケアで「派遣夜勤専従介護士」として都内の有料老人ホームで働いています。
僕は「派遣夜勤専従介護士」として、都内近郊の「有料老人ホーム」「特別擁護老人ホーム」などの介護施設を10箇所以上渡り歩いています。
介護施設で「夜勤」をしたころがある人のほとんどは、夜間の利用者による「オムツ外し」を一度は経験した事があるのでは無いでしょうか?
介護施設の夜勤者にとって、利用者のオムツ外しによる失禁の処理は思った以上に手こずり時間を消費します。
夜勤をやらない「ケアマネ」や、ホーム長などの管理職、もしくは介護経験が無い人からすると「オムツを外しているならまた付ければいい」と簡単に言い切ります。
しかし実際の介護現場ではそう行かないのが現実なのです。
今日は介護職、とりわけ夜勤者を悩ませる利用者の「オムツ外し」について
- 実際の介護現場での対応策
- 「オムツ外し」の正しい対処法
についてお話します。
現在介護現場で夜勤をする方、特に利用者の「オムツ外し」に悩まされている方の参考になれば幸いです。
介護職における利用者のオムツ外しとは
「オムツ外し」とネットで検索すると、まず出て来るのは「赤ちゃんの」オムツ外しなんですね。
赤ちゃんは当然ながらオムツをしていますが、その不快な感じから「オムツ外し」を行ってしまうのは子育てのあるあるだと言う事です。
しかし僕の様に介護職、しかも夜勤の経験がある人であれば「オムツ外し」と聞けば、夜間帯の利用者が自分のオムツを自分で外し「排尿」もしくは「排便」をベッド上でしてしまう地獄絵図がすぐにでも目に浮かぶのでは無いでしょうか?
高齢者になると、排泄に関する様々な機能が衰え「排尿」が頻回になる「頻尿」になったり、認知症の影響でそもそも「排泄の仕方」「トイレの行き方」「排泄の意味」が分からなくなってしまったりする「排泄に関しての障害」が次々に起こりえるのも事実です。
さらに高齢者に多いのが、転倒による「骨折」や疾病の悪化により「寝たきり」になることです。
立つ事歩く事が困難になったり、排泄の仕方が分からなくなってしまった場合、辿り着くのは「オムツ」の使用です。
赤ちゃんの場合、オムツを使用していても成長と共に「排泄の方法」を覚えて行き、いつかは「オムツ離れ」をします。
しかし高齢者が「オムツ」に辿り着いた場合、よほどの事が無い限り「オムツ離れ」をすることは一生ありません。
自分自身の生活の中に突如「オムツ」が入り込んで来る高齢者は、認知機能がクリアな方であればその「意味」も分かります。
しかし認知症の方の場合、いったいなぜ自分が「オムツ」をしているのか?
さらには「オムツ」そのものの存在が何なのか認識出来ない場合がほとんどです。
そうなると特に夜間の入眠時、自分で「尿意」「便意」を感じて、ベッド上で自分の股間のあたりにまとわりついている謎の物体「オムツ」を自ら外してしまう…という「オムツ外し」の行動に出てしまう訳です。
利用者はなぜオムツを外すのか?
夜勤中に一度でも利用者の「オムツ外し」の遭遇したことがある人は、その処理の大変さが分かると思います。
排尿だけならまだしも、排便してしまいさらにはその便を体中に塗ってしまったり…
介護職の仕事の中でもとりわけ厳しい状況に陥ったりするわけです。
では利用者(多くの場合は認知症の方)は、なぜオムツを外してしまうのでしょうか?
答えは簡単で
尿意便意があった時にはズボンを降ろす行動を取る
という基本動作は身体が覚えていて、「排泄」「トイレの仕方」は忘れてしまってもその基本行動は身体に染み付いていて、その動作だけを本能的にしてしまっているわけです。
もう一つの原因としては
オムツやパット内にしてしまった排尿や排便が気持ち悪く感じる
ということも考えられます。
これもまた当たり前の行動で、もし我々が試しにオムツをして入眠して尿や便をオムツ内にそのまましてみたとしたらどういった感触になるでしょう?
やはり気持ちの良い物ではありませんよね?
多くの利用者が「オムツ外し」を行う背景には、ちゃんとこのような「理由」があることを我々介護職は知っておく事が重要なのは言うまでもありません。
実際の介護現場で行われている荒技対処法
僕自身、今まで10ヶ所以上の介護施設や病院での勤務経験があります。
本当に介護施設というのは、その施設によって「価値観」「倫理観」が大きく違います。
つまりその施設によって「やって良い事」「やって悪い事」が実は大きく違います。
Aという施設では当たり前のように行っているケアの方法が、Bという施設ではあり得ないほどのNG行為であったりするのは実は結構多い事です。
この「オムツ外し」についても、実は施設によって「OK」「NG」な対処法は実にまちまちです。
「利用者が夜間にオムツを外す」→「だったらオムツを外せなくしてしまえ」
という理論です。
確かに夜勤中、特にワンフロワー1名夜勤であったりすると、一人の利用者の「オムツ外し行為」が全体の作業を大きく遅らせることも少なくありません。
そういったリスクから「オムツが外せない様に」することを考えるのは、介護現場で実際に働いていると、誰しもが思う対処法だと思います。
しかし利用者本人が自分の意志で「オムツを外せない」状況を介護職が作る事は、立派な「拘束行為」になります。
理論的には利用者の身体を紐でベッドに括り付けることと何ら変わらない行為なのです。
しかし実際の介護現場では、この「オムツ外し対策」として、「拘束ギリギリ」もしくは「完全に拘束」な対処法が取られている施設も少なくありません。
現に僕自身が働いた介護施設では、OJTの時に「こうやってオムツを外せない様にしましょう」と習った現場さえあります。
https://www.kaigoshibaby.com/entry/goodojt
ちなみに僕が今まで働いた介護施設で経験した「拘束ギリギリ」もしくは「拘束」にあたる「オムツ外し」の対処法は
- 利用者にひも付きのズボンを履かせ紐をキツく縛る
- リハパン→オムツ→リハパンのようにミルフィーユ状にオムツを履かせる
- ロンパース(赤ちゃんのツナギの大人用)を着させる
- テープ式オムツを裏表逆に付ける(テープがはがしにくくする)
上記はもちろんすべて「拘束」行為にあたります。
実際の介護現場では絶対に行ってはいけません。
と言いたい所ですが…
実際の僕も夜勤専従介護士として働いている身ですから、その「オムツ外し対応策」が例え「グレー」もしくは「アウト」のことでも、現状の人手不足の介護現場では致し方が無いという感情もあります。
しかし介護職としての認識や行動に責任を持たなければ、一気に「ブラック化」してしまうのも介護職という世界です。
時として「スレスレ」の対応策を取ってしまうのも仕方が無いことかも知れません。
しかしそれは「正しい対応策」をしっかりと認識している、という条件付きだと僕は思います。
では夜間の利用者による「オムツ外し」の正しい対応策とはどういった方法なのか?
について次項で解説したいと思います。
夜間の「利用者のオムツ外し」介護職としての正しい対処法
まずは「利用者がいったい何故、オムツを外すのか?」という原因を知る事が重要です。
この理由については上記で説明しました。
つまり利用者が「オムツ外し」する前に「排泄」を適切に行う
もしくはオムツ内やパット内に排泄した直後にパットやオムツを交換する
この2つが夜間の利用者による「オムツ外し」を防止する「正しい」方法です。
という声が聞こえてきそうですね。
確かに介護職として働いている人の多くは、上記の「正しい対処法」を頭では理解していると思います。
しかし利用者の「排泄タイミング」を的確に認識する事が、実際の介護現場では難しいと思います。
そこで必要なのが「チーム介護」です。
介護施設は当然ながら、在宅の家族介護と違ってたった一人で利用者の介護を行っている訳ではありません。
利用者の排泄タイミング(パット交換の時間)などを正確に全ての職員が介護記録に落とし込む事によって、実はかなりの精度で利用者の「排泄タイミング」を掴む事が可能になります。
その最大の理由は、利用者が介護施設で送る日々の生活サイクルの普遍性です。
介護施設では朝昼晩の食事やおやつ、水分提供などほぼ決まった時間に行われています。
それゆえにその生活を送る利用者の「排泄タイミング」もかなりの割合で「一定化」する傾向にあります。
もちろんイレギュラーはありますが、日々の記録を詳細に取る事によって明確な「排泄タイミング」を掴んだ実例を僕自身は体験しました。
ある有料老人ホームで、利用者の「オムツ外し」が問題になった時に職員で話し合い、この「詳細の排泄記録を残そう」という事になりました。
以来夜勤者は、その利用者の排泄タイミング(パット交換)を「何時何分」まで正確に記録、さらにその排尿量を計量して記録、を繰り返しました。
その結果、半月も経たずにその利用者の「排泄タイミング」をかなり具体的に絞り込む事が出来て、結果その利用者の「オムツ外し」はゼロになりました。
これこそ「介護職」としての仕事だとその時の僕は思いました。
日々忙しくしている介護現場では、「拘束」スレスレの対処法を行ってしまう事も多々あります。
しかし介護職は「チーム介護」を適切に行う事によって、そのような「苦境」を乗り越える事が可能になるのもまた事実なのです。
別の事例
余談ですが僕が働いていた別の施設では、毎晩のように「オムツ外し」をする利用者がいました。
その利用者は歩行が不安定ながら徘徊癖もあり、オムツの上に「クッションパンツ」と呼ばれる転倒時に衝撃を和らげるパンツをもう1枚常に履いていたんですね。
職員で話し合った結果「試しにクッションパンツを脱いで入眠してもらおう」というアイディアが出ました。
そうすると、その晩からピタッとその利用者の「オムツ外し」は止んだのです。
寝ている時にクッションパンツがゴワゴワして気持ちが悪かったのが、その利用者の「オムツ外し」の一つの原因だったのですね。
このように「チーム介護」として意見を出し合う事によって、拘束まがいの対応策をしなくても解決出来る事例もあるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
正直僕自身も「拘束スレスレ」の「オムツ外し対処法」を使ったこともあります。
しかしある介護施設で「正しい対処法」を学び、実践した結果「オムツ外し」を撲滅出来た経験が、その後の僕のケアを大きく変えました。
その場限りのケアでは、本質的な問題は解決しません。
さらに本質的な問題は、介護職一人の手では解決出来ない事がほとんどです。
介護施設で働いているのであれば、介護施設の強みである「チーム介護」を使わない手はありません。
もし皆さんが働いている介護施設で「その場限りのケア」が未だに横行しているのであれば、一度「チーム介護」をしようと提案してみてはいかがでしょうか?
チームでの一度の成功体験は、今後のその介護施設にとっても大きな宝になると僕は思っています。